日本昆虫科学連合Union of Japanese Societies for Insect Sciences

代表挨拶

代表就任のご挨拶

連合代表 阿部 芳久(九州大学)

2024年7月1日に日本昆虫科学連合の第8期の代表に就任しました。微力ではありますが、本連合の運営に尽力してまいります。身の引き締まる思いですが、一騎当千の役員・運営委員の方々に就任していただけたことは幸いでした。第8期においても日本学術会議や17の学協会と連携しながら、本連合の維持・発展をはかります。本連合の活動に引き続き御支援・御協力を賜れば幸いです。

2024年8月25日から30日にかけて国立京都国際会館において第27回国際昆虫学会議(ICE2024 Kyoto)が開催されます。日本は1980年にアジアで初の国際昆虫学会議を開催していますので、日本での本会議の開催は2回目です。開催の準備は、本連合のもとに設置された組織委員会(委員長は本連合の第7期代表の小野正人教授)が担っており、開催されますと小野教授がICE2024 Kyotoの議長に就任されます。本連合は、国内における昆虫科学の普及に加え、国際対応をオールジャパンとして行う組織として2010年に発足しました(第1期代表:山下興亜教授)。このとき、2回目の国際昆虫学会議の日本招致への種がまかれたといえます。その後、第2期(代表:藤崎憲治教授)の最後の総会でICE2016(於フロリダ)の開会式の直前に本連合がサテライトシンポジウムを開催することが承認されました。第3期(代表:多田内修教授)はその準備を周到に行い、第4期(代表:石川幸男教授)が始まってすぐに本連合はサテライトシンポジウムを開催して多くの聴衆を集め、日本における昆虫学の研究レベルの高さを世界に向けてアピールしました。これにより国際昆虫学会議の日本招致への機運が内外で高まり、第5期(代表:伴戸久徳教授)には本連合内に国際昆虫学会議の招致委員会(委員長:沼田英治教授)が設置され、伴戸代表は国際昆虫学会議の評議員会に対して同会議の日本招致を表明したのでした。そして第6期(代表:志賀向子教授)の2020年に国際昆虫学会議の評議員会は2024年の国際昆虫学会議の京都開催を決定しました。国際昆虫学会議の日本誘致は日本政府観光局の2021年度「国際会議誘致・開催貢献賞」を受賞しており、受賞理由には「主催者の誘致に関する意欲的な志しが評価された」と書かれています。2023年5月に総理大臣とすべての閣僚が出席した会議で、国際会議の開催は国策と位置付けられました。日本で数多くの国際会議が開催される中、国際昆虫学会議は、内閣府の組織である日本学術会議が共同主催する会議として2024年1月の閣議で承認されています。組織委員会の委員や関係者の皆様の御尽力の結果、本会議が日本政府から高く評価されたことは、本当にありがたいことです。

ICE2024 Kyotoの記念誌「昆虫科学の最前線」(仮題)の編集は第7期から大村和香子教授を中心に進められています。1980年の国際昆虫学会議のときには「昆虫学最近の進歩」(石井象二郎編)が1981年に発行され、国内の昆虫学研究に大きなインパクトを与えました。この本は各分野のレビューから構成されていますが、現在、編集中の記念誌はレビューに加え、プレナリー講演などの紹介や、ICE2024 Kyotoのテーマ「知的統合による新たな発見」に関連した今後の昆虫科学の展望などの章が含まれる予定です。

2025年と2026年に本連合は日本学術会議と連携して公開シンポジウムを開催する予定です。今後、本連合が国内外で果たす役割はさらに大きくなると思いますので、本連合に御指導・御鞭撻の程、重ねてお願い申し上げます。

日本昆虫科学連合 代表 阿部 芳久

(九州大学大学院比較社会文化研究院)

[第7期] 連合代表 小野 正人(玉川大学大学院農学研究科/学術研究所)

このたび日本昆虫科学連合第7期の代表に選出されました。任期となる2年間、加盟団体代表者の方々と一丸となり、当連合の運営に微力を尽くしたいと存じます。運営チームの活動する意義、創出すべき成果は、連合加盟の17学協会の学術交流、設立目的の達成に資するものでありたいとの方針を念頭に事業展開を試みる所存です。どうぞ宜しくお願い申し上げます。

当連合は、平成22(2010)7月24日に日本学術会議会議室において開催された設立総会を機に発足され、早12年間が経過しました。連合の規約第2条には「昆虫科学および関連学問分野の研究および教育を推進し、我が国におけるこの分野の発展と社会的普及に寄与すること」が目的として掲げられています。昆虫類は有史以前より、人類にとって、感染症、食料資源、農業生産、環境保全、教育・文化、バイオミメティクスなど多方面で深い関わりをもち続けてきた身近で稀有な生物と言えます。昨今の急激な気候変動、人口増加など地球規模で「人類が21世紀を全うできるか」という重要な問題が議論されている中で、様々な分野の昆虫科学者が協働して、かかる課題へ俯瞰的な見地から取り組む姿勢が期待されています。個々の専門分野の深化と学際的な連携の両面が求められる中で、直面する喫緊の課題に昆虫科学に関わる「チームジャパン」の立場から対峙する体制の強化は必須と言えるでしょう。そのような情勢の中、内閣府のムーンショット事業「目標5」において、昆虫科学連合に加盟の学会員がプロジェクトマネージャーを担う研究開発プロジェクトが2題も進行中で、昆虫科学の英智を活かし「2050年問題」の回避に向けて持続可能な食料生産の創出などに挑戦しているのは、誠に時節を得たものであり心強い限りです。

連合の担う重要な事業の1つとして、公開シンポジウムの開催があります。連合発足の端緒をつくった日本学術会議農学委員会応用昆虫学分科会との共催で開催され、現在までに12回を数えています。新型コロナウィルスの感染拡大が続く中で直近の2回はオンライン開催となりましたが、北海道から沖縄まで全国から約350名もの様々な属性の参加者がインターネットでつながりました。その中には高等教育機関の関係者だけではなく初等中等教育機関の生徒も含まれ、講演者と参加者の間で活発な交流がもたらされ、公開シンポジウムとして対面にはなかった大きなメリットも実感できました。今後の運営については「対面の代替策ではないオンライン」を念頭に運営形式を思料して総合的にベストに近い選択ができるようにしたいと考えています。

急速に進んできたグローバリゼーションは様々な面での国際協力を促しましたが、人と物資だけでなく新型コロナウィルスをも拡散してしまい、そのパンデミックがグローバリゼーションそのものを止めてしまうという皮肉な状況が続いています。そのような中でも連合の果たす役割として、加盟学協会の会員間のかけがえのない国際学術交流の場を提供すべく、2024年開催される第27回目の国際昆虫学会議(International Congress of Entomology: ICE)の招致委員会を置き、それを達成したことは大きな成果といえるでしょう。この大会(ICE2024 Kyoto)は、8月25日~30日の6日間にわたり、国立京都国際会館で開催されることが決定し、現在その組織委員会が「New Discoveries through Consilience」のテーマのもとで活動を本格化させています。アジア地域初の開催地として京都で行われたのが第16回大会で1980年のことですので、実に44年ぶりの日本開催となります。もう3年も続く感染症のパンデミックは予断を許しませんが、私たちはそれに対する備えをするとともに、近い将来必ずや人類がそのパンデミックを乗り越える時がくることも信じてまいりましょう。そして、多くの海外からの研究者や同伴者が開催地(京都)の光(文化・伝統、自然等)を観る、文字通りの観光を通じて日本を知って頂くことへの大きな弾みとなることも期待したいところです。連合としては、ICE2024 Kyotoが日本の昆虫学のプレゼンスを国際的に高め、皆様の有意義な学術交流の場となるように日本学術会議など関係諸機関と協力しながら鋭意努めてまいる所存です。特にICE2024 Kyotoで多くの若手研究者が口頭発表に挑戦し、世界との距離を縮めるチャンスを掴むことを期待しています。私事になりますが、大学2年生(1980年)の夏に当時の指導教員に勧められて第16回国際昆虫学会議に参加する機会を得ました。今はもう故人となられた多くの著名な国内外の研究者が、片言英語しか話すことのできない日本人学生に向き合ってくれる。その時、今まで触れたことがない清々しい風に包まれたような感覚になったのを記憶しています。連合の果たすべき機能として加盟学協会の会員に対する「物的報酬」だけではなく目に見えない「感情報酬」も包括されていることが重要ではないかと感じられます。「日本昆虫科学連合」にはこれで完成という形はありません。激しい時代の潮流の中で価値観は常に変化しており、その時々の最適解に近づけるよう絶えず模索し続けることは宿命ではないかと思います。その中で、加盟学協会の皆様が連合に帰属することへの魅力を感じ「エンゲージメント」を高めていただける施策や想いが組み込まれているか、を基準に皆で考えながら運営にあたり、負託に応えていきたいと念じています。

21世紀に私たちが抱える様々な課題に対する日本昆虫科学連合加盟団体の総括的取り組みは、国連の掲げる持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)に通じるものであり、さらに内閣府の示すSociety 5.0の中で新たな社会経済システムを安全・安心で盤石なものとする上で欠くことができない「食料の持続的確保」、「地球環境の保全」、「衛生環境や健康の保持」などに資するものです。

私たちは、膨大な知に対して、限られた命という時間で立ち向かわねばなりません。先達たちは、個々の時間を世代で紡ぎ、累積的伝承性をもって、夢を具現化できることを示してくれました。学協会ごとの縦の糸と連合の横の糸を幾重にも織り重ね、近くで見ると個々の糸が光るも、遠くからみると美しく一体化したタペストリーの模様のような属性を発出できる「昆虫科学研究者の壮大なコミュニティー」でありたいと感じております。第1期(山下興亜代表)~第6期(志賀向子代表)までに積み上げられた貴重な知見を継承できることに感謝しつつ、日本の昆虫科学の歴史を織りなす第7期の時空間を皆様方とともに歩ませていただけることを嬉しく感じています。ご支援、ご協力の程を宜しくお願い申し上げる次第です。

日本昆虫科学連合 代表 小野 正人

(玉川大学大学院農学研究科/学術研究所)

[第6期] 連合代表 志賀 向子(大阪大学大学院理学研究院・教授)

このたび日本昆虫科学連合第6期の代表を務めさせていただくこととなりました。微力ではありますが、17学協会皆様のご協力を仰きながら日本学術会議応用昆虫学分科会と連携し、昆虫科学の研究・教育の推進、昆虫科学の社会的普及のため精一杯努力する所存です。どうぞ宜しくお願いいたします。日本昆虫科学連合は、2010年7月に14の学協会の参加を得て初代代表の山下興亜先生の元に発足しました。それ以来、、第2期藤崎憲治先生、第3期多田内修先生、第4期石川幸男先生、第5期伴戸久徳先生のもと活動を重ね、2020年7月に連合発足からちょうど10年を迎えました。私たち第6期は連合の新たな10年をスタートさせることとなり、身の引き締まる思いです。

今期、これまでに引き続き年1回の公開シンポジウムを開催し、昆虫科学の普及活動に努めます。2021年夏にシンポジウム「インセクトワールド―多様な昆虫の世界II」を開催する予定です。このシンポジウムは2020年6月に開催予定でしたが、COVID-19の流行に伴い残念ながら延期となりました。2021年はオンライン開催も視野に入れて準備して参ります。2022年はこれまでに引き続き、一般の皆様にいっそう昆虫科学のおもしろさを身近に感じていただけるようなシンポジウムを開催したいと考えています。また、昆虫科学の普及活動の一環として、ウェブを用いた情報発信を計画しています。これまで本連合は公開シンポジウムの内容を基にした一般向けの良書を出版してきました。しかしながら、近年は紙媒体での出版がこれまで以上難しい状況です。時代に合った形で昆虫科学の普及活動を実施したいと考えています。今期はウェブサイトを更新し、本連合並びに17学協会の活動をより見える形にするとともに、ウェブサイトが加盟学協会間の連携のためのプラットフォームとなるよう、情報の共有と発信の強化に努めたいと考えます。

また、国外諸団体との連携も本連合の大切な活動内容です。2018年より第5期伴戸代表の下「第27回国際昆虫学会議(ICE2024)招致委員会」が設置され、これまでICEの招致に向けた活動を行ってきました。そして、嬉しいことに2020年8月ICE2024を京都でICE KYOTOとして開催することが正式に決定しました。4年に一度開催される国際昆虫学会議は、世界の昆虫学者数千人が一同に会する世界最大規模の学会です。日本は1980年京都で開催して以来、二度目の開催となります。40年前に世界の昆虫科学の進展を目の当たりにした日本の若き研究者たちが、この40年の昆虫学を躍進させました。ICE KYOTOにおいても多くの学生、若き研究者を惹きつけ、そして子供たちをも巻き込み、未来の昆虫科学へつながる会議にしたいと考えます。そのために本連合は各学協会と力を合わせ、ICE KYOTOの成功に向けて準備を進めて参ります。

最後になりましたが、本連合は、昆虫科学に関連するそれぞれの学協会の活動のもとに成り立っています。互いの緩やかな連携の元、各学協会の発展に資する連合であることが重要であると考えます。本連合と昆虫科学に関する各学協会の相互作用により、日本の昆虫科学の一層の発展に努めて参ります。今期におきましても、どうかご指導とご支援のほど、よろしくお願いいたします。

日本昆虫科学連合 代表 志賀 向子

(大阪大学大学院理学研究科)

[第5期] 連合代表 伴戸 久徳 (北海道大学大学院農学研究院・教授)

日本昆虫科学連合は、2010年7月の発足以来、初代代表の山下興亜先生、第2代代表の藤崎憲治先生、第3代代表の多田内修先生、そして第4代代表石川幸男先生のもと、日本学術会議応用昆虫学分科会との連携を図りつつ、昆虫科学の発展と社会的貢献を目的とした活動を着実に重ねて参りました。私はこの度、本連合の第5代代表に就任いたしました。もとより非力ではありますが17の学協会を擁する本連合の活動を継続・発展させるため努力する所存です。

さて、本連合がその設立の趣旨を踏まえて継続的に実施してきた活動として、年一回の公開シンポジウムの開催とその内容を基にした一般向け書籍の出版があります。これらは、昆虫科学関連の様々な研究を多様な切り口(テーマ)で紹介することで、加盟学協会間の相互理解と交流を深めるとともに、一般の方々への昆虫科学の普及に貢献する目的で実施しているものです。これまでに「新時代の昆虫科学を拓く」「昆虫分類学の新たな挑戦」「昆虫における刺激の受容と応答」「衛生動物が媒介する病気と被害」「昆虫類をめぐる外来生物問題と対策」そして「昆虫の恵み」をテーマとしたシンポジウムが開催されました。また、一般向け書籍として「昆虫科学読本-虫の目で見た驚きの世界-」「招かれない虫たちの話-虫がもたらす健康被害と害虫管理-」が既に出版され、現在、第3弾となる「昆虫のめぐみ」に焦点を当てた書籍の出版に向けて準備が進められています。第5期におきましても、これらの活動を本連合の中心的な活動と位置づけ、継続して参ります。

また、2016年9月に米国フロリダ州オーランドで開催された第25回国際昆虫学会議(ICE2016)において、サテライトシンポジウム“Recent Advances in Entomology in Japan”を本連合が主催し、盛会裏に終えたことは記憶に新しいことと存じます。今年3月には、本連合の下に「第27回国際昆虫学会議(ICE2024)招致委員会」が設置され、ICEの招致に向けた活動が開始されました。2024年にICEが日本で開催されることになれば、1980年に京都で開催された第16回国際昆虫学会議以来2度目の日本での開催となります。ICEは昆虫学関連の学術会議としては世界最大規模のものであり、日本の昆虫科学関連の多くの優れた成果を世界に向けて発信する貴重な機会となるだけでなく、昆虫科学領域で学ぶ学生にとっては世界での昆虫科学の進展を目の当たりにできるまたとない機会になるでしょう。昆虫科学領域の次世代を担う若手研究者の育成にも大いに資するこのような機会の創出に努力することは、本連合の重要な役割だと考えております。

以上、今期予定している活動のうち特に重要と考えられるものについてご紹介させていただきました。さらに付け加えるならば、本連合には、昆虫科学に関連する学協会がそれぞれ独自分野の発展に精励しつつ緩やかに連携して、昆虫に関わる多様な社会的課題にオールジャパンで対応するためのプラットフォームとして機能することが求められています。その役割を果たすための基盤要素が、情報の共有および発信機能であり、この観点から本連合のウェブサイトの拡充が進められて参りました。今期におきましても、情報の共有と発信の強化に努めるとともに、プラットフォーム機能の向上に向けて議論を深めながら、日本昆虫科学連合に期待される役割を着実に果たして参りたいと存じます。どうかご指導とご支援のほど、よろしくお願いいたします。

日本昆虫科学連合 代表 伴戸 久徳

(北海道大学大学院農学研究院)

[第4期] 連合代表 石川 幸男 (東京大学 大学院農学生命科学研究科)

この度、多田内前代表の後を受け、本連合の代表に就任いたしました石川です。もとより微力ながら、本連合の活動を継続・発展させるために努力していく所存です。新執行部の構成につきましては、足達事務局長からご案内させていただきます。加盟各団体の代表者におかれましては、これまで以上に、ご支援・ご協力のほどよろしくお願い致します。

本連合が今期に予定している活動のうち、重要性の高いものについてご案内させていただき、私の就任挨拶とさせていただきます。

今期における最初の活動は、本年9月にアメリカのオーランドで開催されます第25回 国際昆虫学会議(ICE2016)において、サテライトシンポジウム“Recent Advances in Entomology in Japan”を主催することであります。多田内前代表のもと、前期から入念に準備を進めて参りましたが、ぜひこのシンポジウムを成功させ、日本の昆虫科学の優れた成果を世界に向けて発信したいと考えております。本シンポジウムについては、各加盟団体におかれましても、ぜひ会員に参加を呼びかけていただきますよう、よろしくお願い致します。

次に国内における公開シンポジウムですが、最近2年間のシンポジウムのテーマは、「衛生動物が媒介する病気と被害」、「昆虫類をめぐる外来生物問題と対策」でした。テーマの設定が時宜をえていたため、大勢の一般参加者を迎えることができました。今後も、時宜にかなったテーマの公開シンポジウムを開催することにより、一般の方々の昆虫科学に対する興味と理解を深めていきたいと考えております。現在のところ、本シンポジウムは来年の7月に東京大学で開催する予定でおります。

本連合は過去のシンポジウムの講演内容をわかりやすい昆虫科学読本としてまとめる事業を行っております。2015年に「昆虫科学読本: 虫の目で見た驚きの世界」(昆虫科学連合編、東海大学出版部)を出版いたしました。現在は昨年のシンポジウムの講演を中心に、「めいわくな虫の話」(仮題)の企画を進めているところで、来年の出版を目指しております。

最後になりましたが、本連合ではウェブサイトによる情報の発信も重視しております。前期においてウェブサイトの刷新が行われ、その見やすさの改善とともに掲載している情報の大幅な拡充がなされました。今期におきましても、本ウェブサイトを活用した情報発信の強化をさらに進めて参ります。ぜひ定期的に本ウェブサイトにお立ち寄りいただけるよう、各団体の会員の方にもご紹介いただきたく、これについてもぜひよろしくお願い申し上げます。

[第3期] 連合代表 多田内 修 (九州大学特任教授・名誉教授)

日本昆虫科学連合は2010年7月に発足し、初代代表の山下興亜先生、第2代代表の藤崎憲治先生のもと、昆虫科学の発展と社会的貢献という基本趣旨のもと、16の学協会が参加して活動が進められて参りました。 私はこの度、本連合の第3代代表に選出されました。 2年間微力ながら力を尽くして参りたいと思っております。

今期の本連合の活動としましては、第1に2016年にアメリカで開催されます国際昆虫学会議(ICE)で、日本昆虫科学連合が主催してサテライトシンポジウムを開催することが前執行部で決まりました。 私どもはそれを受け、同シンポジウムのテーマと講演者をできるだけ早く決定し、軌道に乗せ準備を進めて参りたいと考えております。 日本の昆虫学の現状を世界に伝えるよい機会になるのではないかと考えます。 次に、学術会議応用昆虫学分科会が現在提出中の提言「昆虫分類・多様性研究の飛躍的な拡充と基盤整備の必要性」が発出され次第、本連合としましても、この提言に沿った取り組みを進めていく必要があると考えています。 昆虫分類・多様性研究は大学研究室等研究機関の縮小が将来的に予想され、危機的な状況にあります。 提言では「諸外国に比べて遅れている昆虫標本の大規模収集、ならびに画像情報とDNA情報のデータベースの拡充を、わが国も早期に実現すべきであり、それらは、昆虫多様性の研究のためだけに必要なのではなく、わが国がグローバル化時代の農林畜産業で優位を築くためにも、また環境変動に伴う昆虫媒介性のヒト感染症の拡大防止や、国内外の生物多様性保全の責任を果たすためにも不可欠である」としています。 さらに、「昆虫科学のコミュニティーでは、標本や多様性情報の整備の必要性は理解されていても、分野横断的な基盤整備に取り組む姿勢がまだ弱い。 研究拠点を中心として、省庁や学会を超えた国内組織間の研究・教育のネットワークを研究者自身が構築し、一致団結して標本収集と情報整備に取り組むとともに、海外の関連研究機関・組織との連携を強化すべきである」としています。 この国内組織間の研究・教育のネットワークを構築する上で本連合はもっとも適した組織であろうと考えます。 参加学協会の交流を推進し、ホームページやメール等を通じて横のつながりを活発にし、参加学協会のご意見を伺いながら組織運営を進めて参りたいと思います。 第3点としまして、前執行部では過去のシンポジウムの講演内容をわかりやすい昆虫科学読本としてまとめ、2014年中に出版する計画ですが、私ども執行部でも2年をメドに同様な書籍の出版を考えています。 第4点としまして、毎年開催のシンポジウムを継続開催し、出版物とともに、昆虫学の普及に貢献したいと思います。

日本昆虫科学連合は組織は出来上がりましたが、今後さらなる活動が期待されています。 将来にわたって果たすべき役割にはきわめて大きなものがあります。 学術会議や関連の連合体とも連携しながら、それらを着実に果たしていきたいと思っています。 どうぞよろしくご指導とご支援のほどをお願いいたします。

連合代表 多田内 修

(九州大学特任教授・名誉教授)

[第2期] 連合代表 藤崎憲治 (京都大学名誉教授)

今後の活動に対する抱負について

2010年7月24日にわが国の昆虫学関係の14学協会の参加を得て、日本昆虫科学連合の設立総会が開催され、日本昆虫科学連合は発足しました。現在では、さらに2つの学協会の参加を得て16学協会になっております。私はこの度、初代代表の山下興亜先生の後任として、本連合の代表に選出されました。昆虫科学の発展と社会的貢献という設立の基本趣旨を踏まえ、非力ではありますが役職を果たす所存であります。

日本昆虫科学連合は日本学術会議応用昆虫学分科会との共催で、これまで3回にわたるシンポジウムを開催してきました。参加学会を代表する若手研究者による先端的研究が発表され、昆虫科学の多様性とその奥深さを改めて感じることができました。一連のシンポジウムが異なる学協会の会員間での相互理解と学際的研究の必要性についての認識を新たにしたことは間違いないように思われます。しかしながら、今後の活動としては、これまでのような学術的交流だけでなく、学協会にまたがる諸問題についての認識を共有し、それらの解決を図っていくことが肝要になっていくものと思われます。

現代においては、気候温暖化、環境汚染、土地開発、侵入生物といった環境問題がますます深刻な問題になりつつあります。その中で人類に対する生態系サービスの根幹を成す生物多様性は大きく失われつつあります。昨年3月には、大震災時の原子力発電所の爆発による放射能汚染といった未曾有の災害も起こりました。昆虫は人類にとって感染症、農業生産、有用資源・バイオミメティクス、文化・教育といった場面で大きな関わりがありますが、それらの関係性は大環境変動下で大きく変遷しつつあります。このような状況を踏まえ、日本学術会議応用昆虫学分科会では、2011年7月28日において「昆虫科学の果たすべき役割とその推進の必要性」という報告を作成し、公表しました。そこでは、昆虫分類学の現状と展望、昆虫媒介性感染症への対応、昆虫産業と異分野連携、昆虫を教材とした教育といった4つの大きな課題についての報告と提言がなされました。日本昆虫科学連合としても、これらの課題や将来ビジョンを踏まえたテーマ別シンポジウムを開催することにより、問題意識を共有していく必要があります。それと同時に、このような課題やテーマを、書籍の出版やサイエンスカフェ、あるいは昆虫科学教育を通して、一般市民にアピールしていく必要があるものと思われます。一方、本連合は昆虫科学に関わるオールジャパンの組織として、国際昆虫学会議(ICE)などの国際的組織の窓口として、国際的貢献を果たしていくことも求められています。

このように、日本昆虫科学連合が将来にわたって果たすべき役割にはきわめて大きなものがあります。学術会議や関連の連合体とも連携しながら、それらを着実に果たしていくための新たな展開を図ることが、この二期目のミッションであると思っています。どうぞよろしくご指導とご支援のほどをお願いいたします。

連合代表 藤崎 憲治

(京都大学名誉教授)

[第1期] 連合代表 山下 興亜 (中部大学学長)

発足にあたり

平成22年7月24日、日本学術会議会議室において、わが国の昆虫学関係の14学協会の参加を得て、日本昆虫科学連合の設立総会を開催し、日本昆虫科学連合は呱々の声を上げることができました。私はこの日本昆虫科学連合の初代の代表に選出されました。設立の趣旨を踏まえ、わが国の昆虫科学を大所高所に立って振興すべく、非力ではありますが役職を果たす所存であります。どうぞよろしくご指導とご支援のほどをお願いいたします。そして、この記念すべき日本昆虫科学連合の設立を皆さんと共に祝いたいと存じます。

昆虫科学関係の学会が緩やかな連携を組み、昆虫に関わる多様な社会的な課題をオールジャパンの立場から解決することの必要性が、数年前から昆虫関係学会のみならず他の学協会や団体から求められてきました。また、日本学術会議は第18期からの改革を通して、わが国の学術体制や学協会のあり方を将来に向けて改革し、これまでの専門分化という学術研究スタイルを補強しつつも、社会のための学術研究としての役割を拡大強化し、これからの知識基盤社会の発展を支える学術活動を目指してきました。

昆虫領域における学術活動も例外ではなく、昆虫科学の新たな研究分野と研究体制、研究論を常に開拓し続ける学術としての独自性を追求すると同時に、社会のための学術として社会的な多くの課題に対応できる学術力を伸ばすことで、社会から期待され、支援される昆虫科学を構築しなければならない状況にあります。

このように学術が社会から熱く期待され求められている時代は稀有であり、今日の状況を学術の将来に生かさないすべはないでしょう。このための学術力は、多様な視点や価値観を持った研究者からなる研究者コミュニティーを土壌にして育て実らせなければなりません。日本昆虫科学連合の設立は、将に、昆虫科学研究者の一大コミュニティーの誕生であります。すべてがこれからであり、可能性の追求を合言葉にして、新生日本昆虫科学連合を育てていこうではありませんか。

連合代表 山下 興亜

(中部大学学長)